日本の金融システムは後進国!!フィンテックの浸透度は中国の5分の1、英国の3分の1

日本の金融システムは後進国!!フィンテックの浸透度は中国の5分の1、英国の3分の1

 「日本はハイテクの国」。そう言われたのはいつまでだっただろうか。少なくとも金融機関のデジタライゼーション(電子化)では、日本は今や後進国になりつつあります。

 英コンサルティング会社のアーンスト・アンド・ヤング(EY)によると、ITを活用した金融サービス「フィンテック」の浸透度で、日本は中国の5分の1、英国の3分の1にとどまっています。しかもEYは、今後日本でも浸透していくものの、他国には劣ったままだと予想しています。

 現金信仰が根強いことに加え、フィンテック企業に対する投資額も他国に比べてごく少額にとどまっている事が要因と見られます。

世界各国のフィンテック浸透度(2017年)

AI(人口知能)を活用して経費率わずか3割!

 海外の銀行が、金融技術に対する投資に積極的になったのは、今からおよそ10年前。リーマン・ショック後からです。

 スペイン2位のビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア(BBVA)は、2009年にフィンテック技術の発掘を目的に「BBVAオープン・タレント」というコンテストを開始しました。その後、12年にウェブ上で簡単な質問に答えるとポイントが獲得できるという「金融ゲーム」を公開したところ、ウェブへのアクセスが16倍に拡大しました。

 以降スタートアップ企業の買収を続けています。18年3月にも、ドイツの金融商品開発ベンチャー「ソラリス」に、クレジットカードのビザ、オランダの金融大手ABNアムロとともに投資することを発表しました。

 これらの恩恵もあり、BBVAの株価はライバル行で最大手のサンタンデールに比べ、おおむねアウトパフォームしています。

 このBBVAに買収されたのが、スペインで急成長を遂げたオンライン銀行の「Simple」です。その名の通りシンプルに、無店舗で預金と送金、デビットカード業務のみを行います。創業者が既存の銀行に「うんざりした」経験から、手続きが簡素で早い銀行の創設を思い立ちました。

 また、シンガポール最大手行DBSは16年、インドにモバイル専用銀行「デジバンク」を設立しました。創業から1年半で120万口座を獲得したといいます。

 顧客からの照会の85%について、AI(人口知能)を活用した「チャットボット」(チャットアプリ上で普段の会話のように問い合わせができる機械による自動応答システム)で対応。経費率は30%程度と、極めて安いと見られます。

 日本のフルバンクの経費率はどれだけ抑えても50%台で、リテール(個人)部門は店舗費用がかさむためもっと高いのが一般的です。

認証技術の進化でスマホ不要の”手ぶら決済”が可能になる!

 金融のIT化の必要性は、20~30年前から散々指摘されてきました。それが今、なぜ急に普及し始めているのでしょうか。

 一つには、過去に比べて技術そのものが進化していることがあります。数年前までは、犬と猫を見分けることすら難しいとされた画像認証技術は、今や犬種までも絞り込めるまでに進化しました。

 こうした認証技術の進化で、例えば、中国の電子商取引最大手アリババが展開するスマホ決済サービス「アリペイ」は、アリババ本社のある杭州のケンタッキーフライドチキンで、「顔パス」による決済の実験を始めました。

 プロモーション動画によれば、女性がかなり厚化粧をして、カツラをかぶっても本人と認識はされるみたいです。まだ実験段階ですが、これが進めば、キャッシュレスどころか、スマートフォンすら不要の手ぶら決済が可能になります。

 同時に、AIを活用した音声サービスも発達しています。「Lola」「Cora」「Anna」「Erica」。こららの女性の名前は、全て銀行の音声アシスタントAI機能です。それぞれ、スペインBBVA、英ナショナル・ウエストミンスター、露ズベルバンク、米バンク・オブ・アメリカのサービス呼称です。

 現金自動受払機(ATM)の場所や、住宅ローンの申込み方法など、基本的な質問には自動で対応できるようになっています。

人手不足をAIやロボットで補う事も、デジタライゼーション推進の理由になっています。かつてのITブームには見られない現象です。

 一方、日本のメガバンクでデジタライゼーションの投資の動きは緩慢です。

 日本では、預金を預かって運用しても銀行はさほど儲かりません。同じマイナス金利の欧州主要国でも、平均貸し出しスプレッド(上乗せ金利)は1.5%程度と、日本の0.69%程度に比べてはるかに高い。

しかし将来、金利が上昇し始めたら、銀行の運用利回りが拡大し、銀行業の魅力が増すことになります。こうなったとたん、新勢力が本気で銀行業を攻略してくるかもしれません。

配置転換やリストラもやむなし!慣習の抜本的改革を!!

 また、金利が上昇した場合、ATMや店頭に準備しておく現金のコストが大幅に拡大します。キャッシュレス化を進める北欧を筆頭に、経済協力開発機構(OECD)の高所得諸国では、人口10万人当たりのATM台数は減り始めていますが、日本はまだ横ばいが続いています。 

今のうちに方向転換することが、金利上昇時のコストを抑制するためにも、競争激化に備えるためにも必須でしょう。

 このような環境下で、メガバンクはようやくデジタライゼーションに本気で取り組み始めました。みずほフィナンシャルグループ(FG)は、26年度末までに従業員1万9000人を削減すると掲げています。三菱UFJFGは6000人、三井住友FGは4000人分の業務量を減らす計画です。

 スリム化を推進しつつ、顧客サービスを維持向上させるためには、デジタライゼーションは必須です。みずほFGは「20の卵」として、さまざまなアイデアを新会社で手掛けています。

 例えば、ブロックチェーン技術を使った貿易決済や、電子認証によるペーパーレス化、間接部門業務の集約などが含まれます。貿易決済では、ブロックチェーンを使うことで大幅にスピードアップし、事務作業の効率化が図れるといいます。

 しかし、これらの技術はまだ過度期にあります。

 中国のアントフィナンシャル系のネット銀行の新しい融資システムは、「3・1・0」で融資が進みます。「申請に3分、審査に1秒、人間介在はゼロ」を表しています。

 これに対して日本では、最新のみずほFGの「J.Score(ジェイスコア)」でも、申請の入力には、慣れている人でも結構な時間を取られます。仮審査と本審査に最低数十分から数時間かかります。

 また、原則銀行振り込みの対応時間内しか送金できません。顧客の利便性では比較になりません。

 また、一部では「印鑑レス」の取引も始まっていますが、いまだにほとんどの業務で印鑑を使っていますし、通帳も発行しています。このような古い慣習を変えることなく、テクノロジー化を進めても、二重にコストがかかることになりかねません。

 効率化を図るには、現場の業務を抜本的に変えることが求められます。

 抜本的な変化には、現場の反発も大きいでしょう。しかし、本気でデジタライゼーションを進めるなら、過去のレガシー(遺産)にすがっている時間はありません。配置転換やリストラもやむなしという覚悟を持てるかどうかです。

“現金大国”の日本を支える年間のコストは2兆円!!

 中国は「現金の信頼性が低いから電子化が進んだ」とも指摘されます。日本は現金が信頼できるから、現状を無理に変える必要はないという考え方もあるでしょう。しかし、現金は、決済速度、管理コストなどから、とても非効率です。

 既存の銀行は、新興勢力に比べて圧倒的な優位性があります。メガバンクグループの総資産は、それぞれほぼ200兆円以上あります。資本もおおむね10兆円を超えていて、絶対的な信用力があります。

 このような信用力をバックに電子決済の仕組みを浸透させることができれば、中国のアリペイ、ウィーチャットペイをしのぐ頑強なネットワークを構築することができるかもしれません。

 半面、いまの地位に安住していたら、日本の金融システムは世界から永遠に立ち遅れてしまいかねません。その先は、金融システムの「ガラパゴス化」です。

この記事も読まれています