老化の原因はコレ!ニコチンアミド・モノヌクレオチド(NMN)が老化を止める

老化の原因はコレ!ニコチンアミド・モノヌクレオチド(NMN)が老化を止める

老化を止める!長寿遺伝子のエピゲノム調節

 不老不死は人類の願いの一つです。中国の歴史書『史記』によれば、秦の始皇帝は「東方の三神山に長生不労の霊薬がある」という徐福の言葉を信じて、3,000人を探索に投入したが徒労に終わったと言います。果てしてアンチエイジングに有効な物質はあるのでしょうか。

 長寿に関わる遺伝子は、ヒトと同じ真核生物である酵母菌の研究から見つかりました。20世紀の終わり、米マサチューセッツ工科大学のレオナルド・ガレンテ教授は、酵母菌を長寿にする遺伝子を探す研究から、「Sir2」という遺伝子を見出しました。

 そうした長寿酵母で働く遺伝子は線虫やショウジョウバエ、ヒトでも見つかり「サーチュイン」と呼ばれるようになりました。

 名前の由来は、サイレント・インフォメーション・レギュレーター。この遺伝子のスイッチが入ると老化が抑制されます。サーチュインが活性化すると、サーチュインタンパク質が作られます。このタンパク質は酵素として働き、「ヒストン」というタンパク質の「脱アセチル化」という化学反応を誘導します。

 

「ヒストン」とは?

 ヒストンとは、DNAの二重らせんの鎖が巻き付く糸巻きのようなタンパク質。

 DNAの鎖の直径は2ナノメートル。そして、1個の細胞には父方・母方由来の2セット分のゲノムが含まれており、その数は合わせて60億塩基に上ります。このため、細胞1個に含まれるDNAの鎖の長さは、何と2メートルもあります。

 これだけの長さのDNAを、直径数マイクロメートルしかない細胞の「核」と呼ばれる領域で保管するためには、DNAの鎖をコンパクトに収納しなければいけません。

 極細のDNAの鎖は、ヒストンに巻き付けられています。そして、DNAを巻いたヒストンが数珠のようにつながってクロマチンという構造を取り、さらにそれが折り畳まれて染色体になります。

 さて、ヒストンは長い間、DNAをコンパクトに折り畳むための部品にすぎないと考えられてきました。しかし最近の研究で、ヒストンも遺伝子のスイッチのオン・オフに関わることが分かってきました。

 DNAにはメチル化という”目印”が付くことで、遺伝情報の発現を抑制する「エピゲノム」現象というものがあります。ヒストンにも似たような目印が付き、エピゲノム的な遺伝情報制御の一翼を担っていることが明らかになってきました。

 具体的には、ヒストンの糸巻き本体の部分(コア)や、尻尾の部分(テール)に化学修飾される場所があります。ここにアセチル化やメチル化、リン酸化、ユビキチン化といったさまざまな化学修飾の目印が付くことで、DNAに記された遺伝子の読み出しに関わります。

 ヒストンのアセチル化は、一般的にはDNAの巻き付きを弱める方向に働きます。そして、コンパクトに畳まれたDNAが緩むことで、遺伝子のスイッチを押す転写制御因子がDNAに結合しやすくなり、遺伝子を活性化させると考えられています。逆に、ヒストンのメチル化は遺伝子のスイッチオフの目印になるケースも多い。

 ヒストンのアセチル化の意義を明らかにした米国のデビッド・アリス博士は、2014年に日本国際賞を受賞。ノーベル賞の有力候補としても名前が挙がっています。

 

無駄に遺伝子を”活性化しない”ことが長寿につながる!

 サーチュインはヒストン脱アセチル化酵素です。つまり、サーチュインはヒストンのアセチル基を除去することで、DNAをコンパクトにする方向に働き、遺伝子の活性化を抑え込みます。ガレンテ教授と、当時共同研究していた米ワシントン大学医学部の今井眞一郎教授がその発見をしました。

 加齢に伴い、遺伝子のスイッチをきっちりとオフにできなくなると、じわじわと遺伝子産物が“漏れて”しまいます。サーチュインの働きによって無駄に遺伝子を活性化しないことが長寿をもたらすようです。つまり、無駄なアクセスを省いて、うまくブレーキを働かせることが長生きにつながります。

 それでは、サーチュインの働きを良くするためにはどうすれば良いのでしょうか?

 もともとのサーチュインの発見の経緯からも想像できるように、カロリー制限はサーチュインを活性化します。でも食欲は抑え難い人間の欲望の一つでもあります。

 赤ワインに含まれるポリフェノールの一種であるレスベラトールは、サーチュインを活性化することが報告され注目を浴びました。しかし、ヒトでの臨床研究で、予想された効果が得られないことが分かってきました。そうした中、今井教授が画期的な論文を発表しました。

 ニコチンアミド・モノヌクレオチド(NMN)という物質を溶かした飲み水をマウスに投与する実験から、抗老化作用があることが分かりました。

 NMNは体内で、エネルギー代謝に関わるニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド(NAD)という物質に変換されます。

 加齢によってNADは減少したり、NADを作る働きが弱まったりします。NMNを投与し、NADを増やしてやることによって、アンチエイジングとなるわけですが、そこでサーチュインの活性化が重要になります。

 また、サーチュインはヒストンだけでなく、色々なタンパク質を脱アセチル化することによって抗老化作用に関わることも分かってきました。

 2016年から、慶應義塾大学でNMNを投与する臨床試験が行われています。成果によっては、未来のアンチエイジング薬の誕生も夢ではないかもしれません。

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